旧仁川伝道館

山の上に建つ教会がイイ、と噂を聞き、1号線に揺られて降りた駅はトウォン駅。漢字を見てはっとしました、桃源だったのか!中国の有名な詩人の詩「桃花源記」の中に武陵桃源という表現があり、それは俗世間からかけ離れた平和な別天地、理想郷を意味するのだそうです。そこからつけられた地名も多いのですが、実際に桃の木が多いから、春を売る女性たちが多くいたことからつけられることもあり、このあたりも実際果樹園を営んでいた日本人が多く住んでいて、桃山という山もあったという説もあるとかないとか。…と思ったら1931年のこのあたりの地図を見つけました。

 



桃源駅を下りるとすぐにタルトンネが見え、古い家が集まっているのが見えます。タルトンネは 韓国語で月の街という意味。山の尾根や中腹などの高い場所に、貧しい人々が集まり暮らすエリアをいいます。強い日差しの中きつい坂をせっせとのぼっていきます。後ろを振り返ればこんな感じ。

 



かつて牛角峠(ウガッコゲ)と呼ばれた山の上に建つライトグリーンの建物。韓国エルサレム教会と呼ばれる建物は、現在は鉄格子に囲まれて入れないようになっています。

 




建物自体は、1956年キリスト教長老朴泰善(パク・テソン)が伝道館として建てたものです。どんな人かと調べてみたら、

朴泰善(パク・テソン、1917年 – 1990年2月10日)は平安南道徳川郡(現:徳川市)出身の宗教家、企業家、教育者である。信徒らから「橄欖の木」「東方の擬人」「勝利者」の別称で呼ばれる。キリスト教長老だったが、自らが神であることを強調して1955年に天父教を創始し、信徒らの共同体「信安村」を建設し、シオン学院傘下の教育機関と企業体を設立した。

とありました。異端視されていましたがわずか1年で信徒を1万人に増やし、建設は信徒の協力が大きかったといいます。

 



伝道館ができる前は、宮中にも出入りしていたアメリカ公使兼高宗(コジョン、朝鮮第26代王)の主治医でもあったアレンの別荘があり、彼が去った後はころころ家主が変わって中には日本人もいたそうです。アレンの別荘は1956年火災により消失、その跡地を長老が競売で手に入れて伝道館を作りました。1978年に天父教が去ったのち、縫製工場、靴工場として使われ、1984年に韓国エルサレム教会(これまた異端宗教系)が建物と土地を購入、2005年まで信徒を乗せたバスが坂道に列を作っていたそうです。その後は立ち入り禁止の放置されている状態が続いていたのですが…

 



いつから外観がライトグリーンになったかはわかりませんが、古くて小さな家が集まる中で異様な存在感を放っています。入口を見つけましたが門は固く閉ざされていました。けれどもラッキーなことに中に人が。解体の業者さんでしょうか?東京から取材に来た、日本人だ、せっかく来たから開けてくれ作戦を実行。すると中にいた長髪の男性が、日本語で東京のどこから来たのとツッコミをいれてきたのです。自分は日芸の演劇科に留学した演劇人だと笑いながら。

 


長髪の男性は、キム・ジョンヒョン 氏(写真中央で電話してる方。すいません、自分が子供以外の人に一眼レフ向けるのがとっても苦手で撮ってません)。「人生は芝居」という劇団代表で演劇活動をするかたわら、プロジェクト「牛角路文化村(ウガンノムナマウル)運動」を進めていると熱く語り始めました。スンイ1・3洞は再開発の対象になってはいますが、計画は遅延していて街はスラム化をたどる一方。そこで仁川出身のアーティストらが空き家を借り、活動をしながら街の住民との共生をめざし、文化・芸術を街に定着させるためにフォーラムを開いたり、都市開発について勉強会をしているとのこと。ゲストハウスやアトリエを作って海外アーティストを迎えたい、仁川の古いもののよさを発信したい、モデルは横浜の寿町、とジョンヒョン氏。

 



 



教会は、演劇や音楽の公演会場として無料で使えるようになったそうです。
たまたま公演の準備をしていたジョンヒョン氏がいたおかげで、教会の中を見ることができました。

 



 



 



 



中に入ると大学路(テハンノ)にでも来たかのよう。各種演劇のポスターが壁いっぱいに貼ってありました。礼拝堂のある2階は老朽化のため立ち入り禁止。
教会自体は築57年なので特に珍しいというわけでもないのですが、この建物は場所がいいですね。

 



 



 



教会周辺は再開発を期待し、不動産業者に土地を売って出ていった人たちの家がそのままになっています。家主はアーティストらに無償で家を提供、ジョンヒョン氏も自分でリモデリングをしてそこに住んでいます。家の外観は自由にしてもいいので水色に塗ったり絵を描いたり。タルトンネとアートの共存は、韓国国内のタルトンネではよく見られる形です。古い家と壁画の作りだす風景に魅かれてその街を散策する人は多いと聞きます。
個人的には住民たちの生の声が聞こえるフォーラムがあったら話を聞いてみたいなと思います。

2 Comments
  1. はじめまして、最近このブログを知って良く拝見させてもらってます。

    このブログでこの旧仁川伝道館を知って、どうしても自分の目で見てみたくなって先日仁川に行って来ました(崇義洞、線路と色街との所も)。

    自分もブログやっているのですが、このブログを見て仁川に行きたくなったっという事を、自分のブログで紹介したいのですがよろしいでしょうか?

    • シュドーさん、はじめまして。コメントありがとうございます!
      このブログを読んで行ってみたくなったというご感想本当うれしいです。
      拙ブログを紹介していただけるなんて光栄です〜。
      行き方でお役に立てることあればいつでもご連絡してくださいね!
      伝道館をご覧になりたいというのもナイスセンスですね~

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