益善洞・皆既月食の夜に

普段入ることのできない王宮で夜の散歩、昌徳宮(チャンドックン)で行われている「月灯り旅行」に参加した後、思いがけずぽかりとできた夜の自由時間。さて、どのように過ごそうかと考えながら歩いていると自然と鍾路(チョンノ)三街へと向かっていました。三年ぶりの皆既月食のこの日、齧られたような月は鍾路三街の上で光っていました。

※暗い中の携帯写真で失礼します

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王宮の中で見上げた月もきれいですが、鍾路三街の喧騒とでたらめの色彩にまみれた街の中で見る月もきれい。ああ、そうだ、益善洞(イクソンドン)にでも行ってみるか。本当に軽い気持ちで。

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花のような街。

 

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益善洞は、楽園商街(ナグォンサンガ)を北にちょっと行ったところにある改良(都市型ともいう)韓屋が密集する街で、路地裏散歩好きの間で人気があります。1930年代に住宅不足を解決すべく民間の業者が土地を開発して大量の韓屋を建てて販売したところなのですが、歴史等については後日別の機会に。そしてこちらをご参考まで。

 

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※写真は昼のものです

益善洞の韓屋の並ぶ路地に入る前に写真を撮り、アップしようと路地で少し立ち止まっていたところ、前からふらりとやってきた初老の女性に

「おまえ!人の家の前で何してる!何撮った!」

と怒鳴られました。

暗がりの中、目が慣れてきました。長い髪の毛を一つに雑に後ろで結び、くすんだラベンダー色の薄手ニットにエンジ色のおばちゃんパンツ。左手にはレシートのようなものをにぎりしめ、右手に持ったドライフルーツのようなものを時々口にしながら、

「なんか話し方が変だね?中国人だろ!迷惑してんだよ、行ったり来たり。あたしは大韓民国の国民だよ。何の権利があってこんな古くて汚いところ撮るんだよ、それ撮ってどこに見せるの?大韓民国の汚いところはここですよって宣伝してまわって何が言いたいんだよ!」

不快であったことを詫び、写真を見せながら、今彼女がいう場所では撮ってはいないけれど、エリア一帯全ての住民にあてはまるのですから不快ですよね、すみませんと詫びました。

 

けれども。

 

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「…汚いのって古いのってだめなんですかね。でもまあ住んでる方からすればアレですよね。でも私、そういうのがいいなと、まあ勝手かもしれませんが、そう思う人もいるんですよ。私はここ好きです。だめ?」

視点が定まっていなかった彼女が、初めて私の目をまっすぐ見てきました。こんな月夜の晩にこんな風に会ったのも何かの縁、飲み足りないんだったらお酒を買ってこよう、そんな日もあったというのもいいんではないかと適当なことを言うと、

「あのさ、あたしさ、60過ぎるんだわ。なーんにもない。不細工だし年だし何にもない。あっちのさ、屋台やってる女たちはまだ私よりは若いからなんとか喰ってける!20代、あたしは60代だよ!私には何もないんだよ。だからこんなところに住んでる、わかる?実は3日食べてなくて、だけど前買ったロトが当たって5,000ウォン(と左手のレシートのようなものを見せながら)、それで今日飲んだんだよ。お金入ったら飲んでしまう。飲むんだったらちょっと待って、じゃあ店で飲もうか。」

と路地をささっと歩き出すので、

「いやー屋台に20代はいないかも!あの、もしかして3日食べてないとか言って、うそっぽいな。すごく飲み食いするつもりだったりして、まあそれでもいいけど。あーなんかいきなり、オンニを信じてはいけないような気がしてきた。オンニもそうですよね、私を信じられないでしょう。」

というと、

「じゃあ、うち泊まってく?でもホント汚いよ、写真は撮ってくれるな。」

と目の前の小さな木の扉を開けました。布団の敷いてある2、3畳ほどの空間がちらりと見えました。

そうきたか!中が見られるか!?と一瞬思うものの、中に何がいるかわかったものではないし、彼女は酔っているし。

『いやー、朝起きたら実は身包み剥がされてたとか嫌だな~』

心の声はそのまま口から出てしまっていました。

 

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「ね、だから信じなくていいんだよ。あたしには、あんたが知ることなんて何にもないんだから、帰れ帰れ。」

そんなだらだらした会話が続くうち、トイレに行きたくなりました。トイレの場所を聞くと、彼女はいきなり隣の家の扉にあったひもをぐいっと引っ張り扉を開けました。

玄関のすぐとなりに公共(?)のトイレが出現しました。ティッシュがなく持ち合わせがないと彼女に伝えると、部屋から手に一杯のティッシュを持ってきて私に渡しました。

「シー(おしっこ)したら帰れ!いいね!」

それが最後の言葉でした。

 

益善洞では餅博物館や洞内にあるいくつかのお店などの共催で、2014年10月10日から10月27日までさまざまな文化イベントが行われています。

益善洞マウル博物館」のサイト(韓国語)で日程がわかるようです。

 

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※これまで韓国を含めアジア諸国で人を信じたために嫌な目にもいっぱい遭っており(いい旅の思い出もありますが)、それなりの人生勉強はしているつもりです。今回のエピソードに関して、苦言等ある方いらっしゃると思いますがそのあたりは。彼女の部屋に入って酒盛りをしたとしたらどうなっていただろう、住民とのふれあいというほっこりエピソードをここに書けたかもしれない、その反対に怖い目にあっていたかもしれない。

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