阿峴界隈

地下鉄2号線阿峴(アヒョン)駅周辺は、再開発地区として高層アパートが次々と建てられています。2014年5月、ひょんなことからフェイスブックでやりとりをしていた方々と、阿峴を散歩しようということになりました。お二人とも在韓歴も長くいろいろなことを知っていて頼りになる方々です。

 

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好奇心に駆られて記録として残そうと軽く言うには、むき出しの空ろな姿がそこにありました。

 

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けれども同時に、遅い午後の日ざしに照らされた風景を美しいと思う自分がいました。

 

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灰色の建物の横で土を持ち帰ろうとしている女性がいました。園芸用に土が必要だとのこと。

 

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モーテル

 

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やる気のあんまりないゆるやかな空気流れる近くの在来市場。
それでも一定の需要と供給で成り立っているのですね。この市場の天井を支える木のようなバランスで。

 

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阿峴について書いたショートエッセイのようなもの、2002年くらいのときのものを加筆修正しました。このときの私が見ていた風景はどんなだったのでしょう。20代の私へ、写真いっぱい撮って残してほしかったな。
けれども後悔の中に甘い勘違いとノスタルジーがあって、感傷にひたるのも悪くない。うん、悪くない。

寒くて目が覚める、そんな朝が続いていた。小さい秋を見つけて喜ぶ時期が来たと思っていたら、あっという間に街は赤や黄色に色づいていた。

134番バスで通るたびに気になっていた、和風の家屋が並ぶ通りのバス停で下りた。
光化門を通り過ぎ、三星江北病院を通り過ぎてちょっと行ったところにある。

家と家の間の細い道を何人かのお年寄りが通っていく。
階段を登ると銀杏並木の続く通りに出た。少し高いところにあるのでソウルを見下ろすような感じになる。ここをまっすぐ歩いていけば阿峴に出るだろうとでたらめにそのまま歩き続けた。冷たい風が吹くたびにスカートをはいたことを後悔した。

小さな市場通りに出た。赤い唐辛子が道路に広げられていて、クモンカゲの庇の上にも唐辛子が並べられている。アジュモニたちは談笑しながら銀杏の殻をむき、にんにくをむき、ふきの筋を取っている。どこからか子供の弾く下手なピアノが聞こえてくる。アジョシたちも将棋をさしていて、その横で子供は子猫がミルクを飲むのを不思議そうに見つめながら、荒い手つきでその子猫を何回もなでている。

この市場通りには、平和な午後3時がゆっくりと通り過ぎていくようだった。
すぐ下では渋滞で車はなかなか動かず、絶え間なくクラクションが鳴り響いているというのに。

大きなダンボールを抱えた赤いワンピースの女の子が、急な坂の真ん中に立っていた。
女の子はダンボールの中をじっと見つめて動かない。近づいてのぞくと小さな小さな一羽の鶉のヒナだった。

私はただ黙ってダンボールの中を見ていた。
女の子は「あのね、足がないから死なせるの」
と独り言のようにつぶやいた。
「死なせるって?今、死なせるっていったの?」

ダンボールから排水溝へと移る彼女の視線を追った。弱った鶉が排水溝に今にも落ちそうになっているのが見えた。
女の子はまたダンボールの中の鶉を見て、ただニコニコと笑っている。

辺りは縫製工場からのアイロンの仕上げ剤の匂いと水蒸気とでむっとしていた。

 

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