2016大田にて・その1

中輪咲きの紅いバラや、オレンジ色のノウゼンカズラが家の軒先を彩っていた五月の終わり、大田の近代建築めぐりをしたのはもう二年半も前のことです。じっくりと見てまわりたいと思いつつも、KTXで約1時間、ムグンファ号でも2時間くらいで行けるという近さゆえの安心感からか、大田の方々の活躍ぶりをオンラインで眺めるのみの日々が続いていました。

忠清南道(チュンチョンナムド)道庁で仕事をされている安さんから、勉強会に来てくださいませんかとお話をいただいたのは11月のはじめ。11月下旬のある土曜日、大田に行くことになりました。勉強会のスタートは夜7時。それまで時間があるのでちょこっと大田の近代文化遺産が見られたらいいな、そして以前大変お世話になったブログ「大田にて」の管理人伊藤氏にもお会いできたらとご連絡を差し上げたところ、何ともすばらしいコースを作ってくださいました。

蘇堤鉄道官舎第53号→昼食→増若第一トンネル→富士忠醤油工場(跡)→(旧)東洋拓殖株式会社大田支店→東光橋→宣教師官舎(韓南大学校)→大田刑務所望楼→大田テミ芸術創作センター(旧・大田富士)

 

IMG_20161126_111704

 

大田駅には待ち合わせの1時間前に到着。駅から少し歩いた通りにあるカフェで休憩しました。大田駅は人がいっぱい。大規模な駅舎工事が進められていました。

 

IMG_20161126_111744

 

カフェには大田の老舗パン屋“聖心堂(ソンシムダン)”の本がありました。創立60周年を迎え、旧道知事官舎で展示が開かれたというニュースを目にしました。コーヒーを1杯飲んでから、再び大田駅に向かい駅ナカの聖心堂へ。伊藤政彦氏、そしてブログ韓国アート散歩やマチノアルキで知られる町野氏と大田で久しぶりにお会いしました。

 

DSC05076

 

まずは、大田駅のすぐ近くにある蘇堤洞(ソジェドン)鉄道官舎エリアへ。枯れ葉がカラカラと音を立ててコンクリートの上をすべっていく晩秋、初めて訪れたときと同じように“時間が止まってしまった”空気があたりを包んでいました。どんよりとした曇り空からひらひらと何かが落ちてきました。今年の初雪、大田にて、です。

 

 

DSC05074

 

鉄道官舎五三号。この官舎に戦前住んでらしたという萩元さんと連絡がつき、その記憶を中心に構成した展示品が「大田テミ芸術創作センター」で見られるとのこと、展示最終日のこの日に大田を訪れることができてよかったです。

 

DSC05078

 

 

IMG_20161126_124047

 

簡単に蘇堤鉄道官舎村を見てから、昼食タイム。雨まじりに降る雪は思いのほか勢いがあり、体を縮めて飛び込むようにして入った食堂は、大田大学近くの豆腐料理店。きのこたっぷりの豆腐鍋をいただきました。

伊藤氏は先生とは呼ばないで下さい、と謙遜するのですが、大田の歴史や文化、そして日本統治時代の大田に住んでいた人々の暮らしに関する情報収集力が素晴らしく、尊敬の一言です。聡明さを宿した澄んだ瞳が照れ笑いで細くなると、少年のような瞳はまさにこういう瞳をいうのだな、とキノコと豆腐をもぐもぐ食べながら思いました。

 

DSC05082

 

 

車を走らせて向かった先は、増若(チュンヤッ)トンネルです。未見の大田近代文化遺産の中でも最も見たいと思っていたのがこちらのトンネルでした。増若トンネルは1905年、京釜線鉄道(ソウルと釜山を結ぶ鉄道)の開通当時、大田駅と釜山方面の増若駅の間に敷設された3つのトンネルで、1919年の区間変更工事で閉鎖されるまで使用されました。

 

 

DSC05093

 

第一トンネルの入口には額石と呼ばれるものがついていて「嶽神驚奔」と刻んであります。駐韓公使林権助の筆によるものです。なぜこのような言葉が刻まれるに至ったのか。トンネルについては別途お話したいと思います。よろしくお願いします。

 

 

shouyu

 

辻謹之助氏が立ち上げ、息子の万太郎が大きくした“富士忠醤油株式会社”の跡地に行きました。そこは現在ウェディング宴会場の駐車場になっています。みぞれの勢いがおさまらず、写真を撮らずじまいした。写真は伊藤氏から送っていただいたものです。味噌やお酒も作っていたそうです。父も息子も大田の発展にも尽力したとのことです。ちなみに、韓国の有名な醤類会社“チンミ食品”の創始者であるソン・ファベク氏はこの醤油会社に入社し、その仕事ぶりが認められて経理まで任されたそうです。

 

DSC05098

 

次に訪れたのは(旧)東洋拓殖株式会社大田支店です。1922年に建てられ、登録文化財第98号に指定されています。1945年以降は逓信庁や大田電信電話局が入っていました。現在はタイル専門店が入っています。幾何学模様のちょこちょことした控えめな装飾があちこちに見受けられます。天井部分中央に西洋の紋章を模したようなレリーフがあります。

 

その2に続きます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です