木浦・旧日本領事館①

旧木浦日本領事館は儒達山(ユダルサン)の東側の麓にあり、木浦で最も有名な近代建築のひとつです。1900年から1907年まで木浦日本領事館、1914年から木浦府庁舎、1974年から木浦市立図書館、1990年から2009年までは木浦文化院とさまざまな公共施設として使用されてきました。

はじめて訪れた2012年、中に少し入れたかと思います。優美な外観とは違い、くたびれた空間。けれども明るい雰囲気に包まれていました。がらんとしたところに古びているものの、美しいマントルピースの姿が印象的でした。

いつのまにか建物はきれいになり、木浦近代歴史館本館(一号館)としてオープンしていました。2014年、近くにある木浦近代歴史館(東洋拓殖株式会社木浦支店の建物)は木浦近代歴史館二号館と改称され、旧日本領事館の建物が近代歴史館のメインとなり、充実した木浦の近代歴史についての展示を見ることができます。

 

 

 

 

建物の前に慰安婦少女像が。2016年4月に設置されたそうです。ここにもあったかとちょっぴり驚きつつ建物へと続く階段をのぼりました。

 

 

赤レンガの二階建て、ルネサンス様式の美しい建物です。韓国にある近代建築の中でも、様式美にあふれた建物。窓枠や柱の青(できた当時の色とは限りませんが)と、壁の白いラインが建物に心地よいアクセントをつけています。赤レンガと花崗岩の白の対比は、日本の建築家である辰野金吾お得意デザインで辰野式と呼ばれています。この旧日本領事館の白のラインは花崗岩ではなくレンガを白く塗ったものですが、その辰野式のデザインをならっているようです。資料によれば、設計者に小林義雄という人の名前があります。彼はこちらの資料で“渋沢栄一の兜町邸宅の内装を担当した”人物として出てきますが、おそらく同一人物ではないかと。

 

 

ところで、旧日本領事館ができる前の様子を簡単にご紹介しましょう。1898年に初めて木浦に日本領事館が設置され、当時の外務大臣大隈重信から命を受けて久水三郎領事が赴任します。領事館はこのようなバラック小屋で、もとからあった万戸庁という建物を利用したそうです。(以下モノクロ写真は木浦誌編纂会『木浦誌(1914年)』より)

当時の領事官が住居でいかに苦労(特にオンドル)したか、ということが『木浦誌(1914年)』に詳しく書いてあります。

 

 

1899年建築中の日本領事館仮館。警察署、郵便局も兼ねていました。罪人を捕まえてもきちんとした収容施設がなかったため、領事館の人々は緊張したそうですよ。

 

 

そして1900年に立派な建物が完成しました。木がずらっと並んでいます。久水氏が土地獲得と建設費用のために力を尽くし、森川季四郎領事官時代に落成した、と資料にあります。

 

 

 

1900年12月には領事館前には港までまっすぐのびるこの大きな道はあったのかな?

 

 

―当時の建築物は本館の外、警察署監獄、領事官舎、書記生、通訳生、警部等の各官舎の外巡査合宿所二棟に及びたりき、而して本館背後の山を老人峯と称し其建築の宏壮堅固なる当時韓国諸港市の領事館中第一等と称せされたとみならず、廈門に於ける領事館と共に我邦在外領事館中の双美と称せされたり―『木浦誌(1914年)』

自慢の建物ですね。

 

 

 

 

きれいに復元された建物内に入るときはとても嬉しく、そして緊張しました。2号館の展示は日帝の蛮行、残虐な行為を示すショッキングな展示が多く、日本人として見るのがなかなかきつい内容となっているので、この本館の展示はどうだろうと心配しました。が、杞憂に過ぎませんでした。

 

 

次回は内部および外にある防空壕の様子と歴史館の展示についてです。

Share
4 Comments
  1. こんにちは。いつも大変興味深く拝読させていただいています。
    私も、今回の旧領事館を含めて木浦には4月23日に行ってきました。(ちなみに22日は光州の旧松汀神社や旧道庁舎、楊林洞。24日は羅州、栄山浦にも足をのばしました)
    私は東京に住んでいますが、月に1回程度の頻度でソウルに仕事で出張しておりまして、その度にあなた様のこの「韓国古建築散歩」、やまだトシヒデさんの「韓国に遺る日本の建物を訪ねて」、鄭銀淑さんの「韓国の昭和を歩く」及びコネスト記事を参考に、各地の建物を見て歩いています。
    今後は、一方的に参考にさせていただくだけでなく、私なりの感想もコメントさせていただこうかなと思います。よろしくお願いいたします。

    • 古石場様

      コメントありがとうございます!全羅南道の近代文化遺産、たくさんご覧になったのですね!
      拙ブログは情報提供サイトとして読むには不足なところが多くありますが、それでもご参考にしていただけて
      大変嬉しいです。
      ありがとうございます。
      ご感想もぜひお聞かせください、よろしくお願いいたします!

  2. liumeiuru様 こんにちは。
    この木浦旧日本領事館は韓国の近代建築の中で一番見てみたいものでした。
    木浦駅から歩いて旧市街に入り、右手の台地中腹に建物が目に入った時は、あまりに想像していた通りの美しさで、ものすごく感動いたしました。正面から見上げると、ご紹介のように道路の起点の碑が右側にありましたが、正面真下に、今回取り上げられてはいますが、それまでは情報がなかったので少女像があったことに、やや戸惑いましたが・・・(群山の東国寺でも同様の感情)
    建物の外観も、内装も、展示物も、外の防空壕や石の書庫、水飲み台、奉安殿跡、すべてが興味深く、2時間以上滞在してしまいました。
    liumeiuru様がすばらしいところは、深く掘り下げて調査をされて古い歴史的資料にたどり着く、真実を極められるその姿勢。そして、韓国語がご堪能で、勇気を出されて、実際にそこにいらっしゃる方にフレンドリーにご質問をされるお人柄。
    結果、見ごたえのある内容でありながらどこかノホホンとした優しが滲み出るホームページになっているんだなと感じます。
    内部や展示物、防空壕について、次回ご掲載予定とのこと、楽しみにしています。

    • 古石場さん
      コメントいただいていたことに本日気がつきました、遅くなりすみません。
      木浦旧日本領事館に2時間以上滞在されるとは、すばらしいです!
      ワタクシは専門家でもなんでもなく、韓国にある古いもの、建物を見るのが好きなだけで
      まちがったことも書き散らしているかとは思います。
      ただ、専門的な知識からちょっとはみでた部分、そういったところに
      耳を傾け、しっかりとした視線をそそぎ、素人だからこそ見えてくるものを拙いながらも自分で撮った写真や自分の言葉で伝えていけたら
      と思っています。
      これからもよろしくお願いいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です