鍾路・路地探検コース7

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ソウルの中で最も好きな区は鍾路(チョンノ)区です。鍾路区には八十もの洞(町の単位)があってそれぞれが歴史を持ち、四大古宮、清渓川(チョンゲチョン)、仁寺洞、大学路、北村韓屋村など人気観光地だけでなく、タプコル公園や宗廟前広場、鍾路3街などディープなスポットもたくさんあります。鐘閣(チョンガッ)にある鐘をイメージした区のキャラもとってもキュートですし。

ところで区が運営している観光情報案内サイトはコンテンツが充実していて、大変参考になります。今回紹介するのは「路地探訪コース(コルモッキルタンバンコース)」の中の「橋南洞(キョナムドン)」。元々「ディリクシャ」と呼ばれる洋館を見に杏村洞(ヘンチョンドン)に行ったらぽつぽつと近代建築やら史跡があって、後で調べたら探訪コースとして有名だったという次第。

※以下は2013年1月当時のコースです。現在の鍾路区観光情報案内サイト「路地探訪コース」は27あり、橋南洞コースの内容は変わっています。
(2017年11月11日現在)

 

ちなみに鍾路区が提供する町の路地探訪コースは27もあって、どれもとっても興味深いものですがWeb上には日本語訳版がない…、観光公社にはあるのかしら?

では地下鉄5号線西大門(ソデムン)駅4番出口から出発です。

 

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しばらく進んで左折すると、「江北三星病院」が見えてきます。この立派で近代的な病院の中にあるのが…

 

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1.京橋荘(1938年)

崔昌学(チェ・チャンハク、1890~1959)という大富豪が建てた洋館で、ビリヤードルームや理髪室などもあったそうです。1945年の終戦後(解放後)に中国の上海から帰国した金九(キム・グ、1876〜1949)に無償で提供されて、金九の私宅として使われました。京橋荘と呼ばれるようになったこの洋館、大韓民国臨時政府の閣僚会議が開かれたり、金九が暗殺され場所として歴史的価値が高いということで復元事業が進んでいます。もう終わったかなーとのぞいてみましたが、まだまだのようでした。病院の中にあるというのがユニークな近代建築です。

 

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2、旧京城測候所(1933)

京城測候所は1907年に現在の楽園洞(ナグォンドン)、つまり仁寺洞の近くにありましたが1933年に松月(ソンウォル)洞に移転しました。ソウル気象観測所として現在もソウルの天気の基準になる場所になっています。この場所に雪が降ればソウルに初雪、敷地内にケナリ(レンギョウ)やチンダルレ(山ツツジ)が咲けば、ソウルでの開花宣言が出されるとか。

 

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白く塗ったコンクリートの建物のように見えますが、実はレンガ造り。2012年6月に私のリクエストで近代建築散歩本の著者チェ・イェソンさんと一緒に散歩(京郷新聞掲載)した際、イェソンさんは塗装がはげて黒いレンガがのあるところを見つけて大はしゃぎしてました。レンガは赤いものが主流ですが、黒くて大きいレンガというのもあってレンガの種類や色から時代もわかるのだそう。レンガに萌えているイェソンさんを前に、まだまだ自分は修行が足りないと思ったものです(笑)

月岩公園の柵を越えれば地図中赤線の道から行けるのですが、あんまりおすすめできるアクセスではないので、赤線右側にのびている道からどうぞ。急勾配の坂を登りきった丘の上にあるので、見晴らしはバツグンです。ただしたどり着く頃には息切れ間違いなしです。

 

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3.洪蘭坡の家(1935)
洪蘭坡(ホン・ナンパ、1897〜1941)は東京音楽学校で学び、作曲家・ヴァイオリニストとして活躍しました。朝鮮の近代音楽の先駆者、朝鮮で初めてジャズを紹介した人物とも言われています。祖国を愛する曲を作る中、統治時代に日本の軍歌を作曲して親日派のレッテルを貼られたため、辛い晩年をこの洋館で過ごすことになってしまいました。代表曲に「鳳仙花」「故郷の春」などがあります。

 

 

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この日もマイナス8度、壁の蔦は枯れてしまっていますが緑の季節にはとてもきれいだろうと想像がつきます。明るい赤レンガの家はおとぎ話にでも出てくるようなメルヘンチックな雰囲気。1930年頃ドイツ人宣教師が建てたと推測されるこの家に、1934年洪蘭坡が引っ越してきて2回目の新婚生活をスタートさせました。洪蘭坡の死後、1936年にはある日本人の手に渡り主人が次々と変わっていく中、増改築もされてきました。しかし構造自体に大きな変化はなかったため、2004年にソウル市の登録文化財に指定され、記念館として一般公開されています。日曜日は休館で中には入れませんでした。

 

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4. 権慄(クォン・ユル)が植えたとされるイチョウの巨木
家が密集した高台に大きなイチョウの木が現れます。文禄・慶長の役(1592〜1598年)の戦い当時、朝鮮軍総司令官だった権慄が植えたというイチョウ、樹齢400年くらいと推定されています。イチョウの木がある街=銀杏洞(ウネンドン)とすぐ近くにあった新村洞(シンチョンドン、学生街の新村とは関係はないみたい)が合わさって、このあたり一帯を杏村洞と呼ぶようになったといいます。

 

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5.ディルクシャ(Dilkusha)

ディルクシャ(Dilkusha)は理想郷とも訳される、「心の平和」という意味を持つヒンディー語。1898年に韓国で金鉱採掘業者兼記者として活動したアメリカ人アルバート・テイラーが、1923年に建てた赤レンガ造りの洋館につけた名前です。奥さんのメアリー・テイラがーインドのラクナを訪れたときに見たディルクシャ王宮が印象的で、家を建てるならその名前にしようとつけられたのだそう(夫婦はインドのボンベイで結婚式を挙げたようです)。1925-6年頃落雷でダメージを受けて改修した後には、1927-1929年まであるオーストラリア人一家が居住、1929-1930年には神戸からやってきたグリグスビー一家(韓国の古典詩を英訳して神戸で出版したジョアン・グリグスビーという女性の写真などがこちらに)が住んでいました。その間ってテイラー夫妻はどこにいたんだろう…。

 

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インドのラクナにあるディルクシャ王宮

 

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右側にイチョウの木があるのがわかる昔の写真

アルバート・テイラーは、1919年の3・1独立運動を世界に初めて知らせた人物。生まれた子供に会いにいくためセブランス病院を訪れたときに妻メアリーのベッドの下に紙の束を発見、韓国人看護婦が密かに隠しておいた独立宣言書だと知ったアルバートは弟のビルを通じて密かに持ち出したのだそう。1941年真珠湾攻撃が発生し、ソウルに外国人追放令が出されましたがテイラー夫婦は命令に従わなかったため、アルバートは西大門刑務所に入れられ、メアリーはディルクシャでの監禁生活を強いられました。
戦後(1945か1953年かは分かりかねますが)、このあたりは貧しい人々が住むエリアとなり、残されたディルクシャにも複数の世帯が住み着きました。2006年、息子のブルースがソウルを訪れたときに杏村洞の家を確認。また父アルバートの写真をソウル市に寄付して李明博(当時ソウル市長)から名誉市民証が贈られました。西大門にあるソウル歴史博物館のエントランスにある昔のソウルの写真は、アルバート・テイラーの作品です。また、地下鉄2・6号線合井(ハプチョン)駅から近い楊花津外国人墓地にアルバート・テイラーのお墓があります。

 

 

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トイレの排気管(というのかな?)が切ない。すぐ横にあるカーブに合わせた窓に匠の技を感じるのですが。

 

 

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2階からも入れるように改装。

 

 

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ガス計器がいくつも。10世帯ほどが住んでいると推測されています。訪れたこの日、アーチ窓からハルモニがじっと私をにらんでいました。その窓のすぐ下に「DILKSHA 1923 」と書かれた礎石があるのですがハンアリ(かめ)がいっぱいでどかさないと見られない状態でした。ディルクシャ関連のブログを見ていると礎石や内部の写真がけっこうあるのですが、あれは中の人に許可をもらっているのか、それとも文化財登録予定建物で所有は韓国資産管理公社で、不法居住している住民なのだから無視してもOKと無断で撮っているのか判断ができかねます。ちなみにこの日は住民のおじさんが3人くらいいて、外観だけ撮らせてくださいとお願いしてOKが出たので撮らせてもらいました。建物や風景だけを撮っていると、人物撮影より怪しまれるのが難しいところです。

文化財指定予定なのですみやかに出て行くようにという看板が放られているのを見て、住民と公社および自治体間での問題解決の難しさが想像されました。公社は罰金支払いと即刻立ち退きを求めています。公社関係者は、鍾路区がソウル市と調整しながらディルクシャの保護計画を推進中なので、補償云々は鍾路区のほうで検討することで自分たちとは関係ないと丸投げです。

上海にも歴史的な建築物に複数世帯が住み着いて、のんびりと洗濯物を干す風景が見られたのですが、ソウルにもディルクシャのような建物ってあるのですね。

 

ディルクシャは2017年8月8日に登録文化財第687号に指定されました(2017年11月追記)

 

2 Comments

  1. まちの
    2013-01-26

    いいですねー。ここも。
    うちの会社の近くなので、こんど歩いてみようかな。。。

    返信
    1. admin
      2013-01-27

      会社のお近くなのですか?よいですねえ。お散歩というには坂がキツイですが、よい運動になりますし旧京城測候所から眺める景色大好きです。

      返信

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