映画「ピエタ」・乙支路

韓国映画初のベネチア映画祭金獅子賞を受賞した、キム・ギドク監督の18作目『ピエタ』。仙人のようないでたちの監督が受賞の嬉しさのあまり、舞台上でアリランを歌ってしまったというのが記憶に新しいところです。
さて、今回紹介するのは、『ピエタ』の舞台となった、ソウルの中心部を流れる小さな川、清渓川(チョンゲチョン)周辺の町工場。金属加工を生業とする零細町工場は、ソウルの代表的なオフィス街・椅子などのインテリア家具を扱う問屋街が集まることでもよく知られている、乙支路(ウルチロ)エリアに密集しています。

 

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「ハレルヤは永遠なり」
映画の最初に映し出される教会です。ここってどこ?と気になるシーンが続出で、次々と出てくる古いマンションや工場が作り出すソウルの風景にすっかり魅了されてしまいました。キム・ギドクってやっぱりすごいな、ラストシーンはちょっと…ごにょごにょでしたが、見終わった後の高揚感はいまでもはっきりと覚えています。ここ、行かなくちゃ!と。

 

 

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主人公の男(イ・ジョンジン)の仕事場は零細な町工場が密集するところ。貧しく暮らす人々にわざと怪我を負わせてまでも、貸したお金を回収する残酷な借金取りです。そこに30年前に生き別れた母親だと名乗る中年の女性(チョ・ミョンス)が現れたことから、ミステリーが展開していき予想外の結末を迎える…という内容。ストーリーはとてもわかりやすくシンプルで、初キム・ギドクな方でも十分楽しめる作品になっています。

 

 
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「息子、はい、鶏」「息子、はい、お魚」
母と名乗る女性は、新鮮な材料(笑)でごはんを作ってくれます。ごはんの力は大きい。孤独な主人公の不信と反発の心は、次第に消えてゆきます。

 
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その女性の息子になりつつある主人公も、ウサギ(画面だとわかりにくいですがウサギです)をゲットして持っていくように。
このウサギはこの工場街の中にある古い日本家屋に住んでいたおばあさんから奪ってきたものです。
このシーン見てびっくり!特殊韓流ポエト(尊敬をこめて)みょんどん君の「螺子の町・緩慢な磁力とメタリックの葡萄、旧京城府林町あたり」に出てくる三湖銘板(サムホミョンバン)が入ってる日本家屋だったのです。
キム・ギドクとみょんどん君がリンクした瞬間です。

 

 

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三湖銘板。キム・ギドク監督は当初この映画、日本ロケも考えていたそうです。あまりに厳しい撮影許可に断念したとのこと。
どこを考えていたのでしょうか。新宿?大久保?それともイイところ見つけてたのでしょうかね。

 

 

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私、映画に出てくる日本家屋がこの家だと勘違いしてしまい、結局まだ「三湖銘板」の家は見てません。また近いうちに行ってこようと思います。この家も結構インパクト大ですが、大林商街の東側建物階段のすぐ近くにあります。

 


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1930年代の京城の地図です。黄金町通が乙支路で、そのすぐ上に青渓川(清渓川)と書いてあります。大林商街の東側に広がる工場街は、幸橋(現在のペオゲ橋ですかね?)と書いてあるすぐ下あたりが現在の山林洞、つまり林町ということになります。

 

 

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日曜日の昼下がり、工場は休みなので人はほとんどいません。死んだように静かでつららが溶けて水が落ちる音と、遠くの教会から生演奏のハレルヤが聞こえくるだけ。

 

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中央に見えるのは進陽商街。アパート部分は映画「泥棒たち」のアクションシーンに登場します。

 

 

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上から見下ろして思わず声を出してしまいました。こんなソウルの真ん中にごっそりと日本家屋が残っているとは。日本人がいなくなる→私娼街になる→零細の工場になる、という流れで現在があります。反対側の敦義洞(トンイドン)にあった古い家屋がチョッパンチョンになってスラム化したように。

 

 

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長寿・福食堂から流れてくるFM放送は、今どきのK-POP。

 

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都市の真ん中に時代に取り残された場所ががぽーんと現れるから、ソウルはやっぱり面白いですね。そして力づくで闇の部分を消し去ってしまうのがすごい。ソウルの近代はなかったことにしてしまうテンションの高さと、古いものはとにかくなくすという考えが多数を占めるのがひたすら残念。世運商街は2015年までに完全に取り壊して緑の公園にする予定だそうです。周辺の、つまりこの工場の人々はどうなってしまうのでしょう?明るい緑豊かな公園の昔の姿がこんなだったなんて、人々は振り返っている暇なんでないのでしょうね。資本主義社会をわかりやすく批判しているキム・ギドクの映画「ピエタ」、日本では2013年夏、渋谷のル・シネマで公開予定だそうです。

あー、地図最近入れるの忘れてましたね!な、なおします!!

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