建築家金寿根

以下、facebookにノートというあまり使われていない機能がありますが、そこに以前載せた文章を加筆修正しました。

金寿根(キム・スグン、金壽根、1931-1986)は、金重業(キム・ジュンオプ、1922-1988)と共に韓国近代建築の巨匠と呼ばれる建築家です。1954年東京芸大に留学し卒業後、1958年東京大学大学院入学。当時の友人に磯崎新がいました。

オリンピックスタジアムとして知られる蚕室(チャムシル)総合運動場、仁寺洞近くの現代建設本社ビル脇にある空間社屋(チャン・ドンゴン主演の「紳士の品格」のロケ地としても知られています)、京東(キョンドン)教会などが代表作で、ほかにもウォーカーヒルのヒルトップバー(PIZZA HILLというピザ専門店)、南山(ナムサン)のタワーホテル(現在はその場所にバンヤンツリーホテルあり)、韓国日報社社屋(解体)などが知られており、200以上の作品があります。
ソウルの都市計画にも積極的に携わり、また1970年の大阪万博では韓国館の設計を担当しました。

 

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作品については、こちらをどうぞ。

今回お話しするまず一つ目は、彼の1965年に建てれらた旧扶余(プヨ)博物館(現在は国立文化財研究所)。
2011年11月末に扶余を訪れた際、広い芝生の空き地(百済時代の何かの跡ですね、多分)を扶蘇山城(プヨサンソン)方面へと歩いていたのですが、不思議な建物が見えてきました。なんだかよくわからないけれど、とにかく近づいて見に行かなくちゃならないとこちらをその気にさせるオーラを放っていた建物。百済関係の建物?なんだか神社のようにも見える、色使いが日本の中世のお城っぽいような…

 

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時間に余裕がなかったので遠目で見て終わってしまいましたが、それからずっと気にはなっていたので調べてみました。

 

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金寿根の作品と知って驚きましたが、実は韓国で「倭色(侮蔑のニュアンスのこもった日本風という意味)が強すぎる、金寿根は親日派だ!解放から20年しか経っていないのに、よくもこんな神社みたいなのを作ったな!」と非難ゴーゴーのいわくつきの建物だったのです。
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これはどう見ても、日本の神社建築の様式をそのまま持ってきたのではないかと。そして階段の部分をよく見ると鳥居に似ているんじゃないかと。こうした厳しい意見に、金寿根はこんなふうに反論したといいます。
「みんなヨーロッパのフランスやらどこやらに留学して体得したものを作品に生かしてる。(私は日本に留学したのだから)日本からの影響を受けるということについて、否定的な見方をされるのは不快だ」

はい、神社建築様式をパクってみましたと認めたかどうかはわかりませんが、金寿根にとっては“カッコイイな、デザインに入れちゃおうかな”、という建築家としての新たな試みにすぎなかったのではないかと思います。ちなみに韓国で神社はタブーもタブーです。日本の敗戦後、半島にあった神社は徹底的に破壊され、神社への階段、敷地内にあった木造建築物、手水鉢くらいしか残っていません。

 

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さて、二つ目は1963年に完成した自由センターという建物。これは南山タワーの近くにあります。

 

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かつての姿その2。右にあるのはタワーホテルです。

 

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国家プロジェクトレベルで巨額な資金によって建てられたものが、今はお決まりのミントグリーンに塗られています。

 
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自由センターは、韓国自由総連盟という反共主義を掲げる右翼団体の本拠地として建てられました。1954年に李承晩大統領と、蒋介石中華民国総統の主導によって組織されたアジア民族反共連盟の韓国支部として設立されたのが前身であるため、敷地内には李承晩大統領の銅像があります。ちなみに銅像は、光化門ちかくの世宗大王の像と同じ作者です。

 

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曲線と直線のハーモニーが美しく、反り返った大きなコンクリート屋根がなんといっても大きな特徴。

 

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けれども、時代の流れとともに建物の使われ方に激しい変化が。建物はウェディングホールがオープンしたとのこと。そしてこの物流関係っぽい車を見てください。巨匠の作品がこのような扱いでよいのでしょうか。しかもこの建物前の駐車場は野外映画館になっています。李承晩大統領の銅像を見たときに、正直なんでこんなところに??と驚きました。
南山という場所の歴史的背景や金寿根のことを知らなければ、ただのでかい変な形の建物で終わってしまうかもしれません。反共とかそのあたりの韓国の歴史、私ホント全然よく知らないな…難しいからなあ。

金壽根の作品はつぎつぎと解体される危機にさらされています。タワーホテルも韓国日報社屋ももうありません。金寿根設計三大教会のうちの一つ、仏光洞聖堂(プルグァンドンソンダン)も周囲の再開発により崩壊の危機にあるというニュースも。
また、金寿根が1960年に設立した空間総合建築社事務所(前述の空間社屋のこと)が経営難に陥っているというニュースが2013年1月に報道され、業界に衝撃が走りました。2014年仁川(インチョン)で開催予定のアジア競技大会江華競技場の仕事も請け負っているそうなので、どうなるか気になるところです。

 

 

 


2 Comments
  1. 先日、ウォーカーヒルのヒルトップバーを見てきました。
    ウォーカー将軍のWの字をかたどった逆三角形の建物で、当時、よくこんなものをつくったな、という感じでした。
    金寿根氏は独特な形の建築をたくさん作った人なんですね。
    他の作品も見に行ってみたいなあ、と。

  2. >machinoさま
    おおお!ヒルトップバー行かれたのですね!独特ですよねー。バーのほうは見たことがないのでぜひ!と思うのですがものすごく遠くに感じるのはなぜでしょう(笑い

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