仁川・万石洞

江南(カンナム)のちょこっと高級スーパー取材の帰りだったでしょうか、若い女の子がたくさん行き来する地下商店街で、「今チョッパン(木造賃貸住宅が隙間なく並ぶ、住宅密集エリア)がマイブームなんだよね」と話していた時のことです。古いまち歩きが好きな仁川(インチョン)出身の男の子が一言。

「それならケンイブリマウル、すごいから。」

ケンイブリマウル、発音がよくわからなくてすぐにネットで調べました。仁川で最も古いスラム街と言われる万石洞(マンソッドン)の別名で、ケンイ(猫を意味するコヤンイの訛り)+ブリ(口ばし)で〝猫のくちばしの村〟を意味するそうです。このあたりの一部が昔猫島と呼ばれていたから、ウミネコがたくさん集まっているのを見て自然とそのように呼ぶようになったとも言われていますが、地元の人たちも地名の由来はよくわからないのだとか。

※ケンイブリマウルはもっと東のエリアでした。以下は万石洞のある一部を訪れたときの感想になります(2017年9月)

 

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万石洞の場所は、国鉄仁川駅から歩いて約10分ほど。1905年以前はほとんどが海でしたが、仁川駅前で旅館を営んでいた稲田という日本人事業家が許可を受け、埋め立て事業を行いました。

 

팔경원

 

写真は、仁川の歴史に非常に詳しい仁川の歯医者さんブログより。稲田はこの土地に八景園という料亭と猫島遊郭を作りました。埋め立て地には現大韓製粉の前身の日本製粉や、東洋紡績(現・東一紡績)、蔵米所、醤油工場などが次々と建てられました。そういった工場で働く日本人が住んでいた集落は赤碕(あかさき)と呼ばれ、木造の日本家屋が次々と建てられました。

韓国にある日本家屋密集地帯というのはだいたい流れがあります。日本人集落→1945年の終戦で日本人がいなくなる→1950~53年の朝鮮戦争で避難民が不法に住み始めるor私娼街になる→家が細かく区切られ低所得層の人が多く住むスラム街になるor町工場地帯になるというケースが多い気がします。

 

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ところで私は地図を読むのが苦手。仁川駅からとりあえず万石洞住民センターまでタクシーにのり、そこから歩きました(目的地とだいぶ離れてますね、苦笑)。地図アプリが示す道どおりに進むと、スラム街の家と家の間を歩くことになってしまいました。海辺の生臭さとアンモニア臭ただよう陽の当たらない道。

こんな感じのところをぐんぐんすすむと、写真緑色の家の横の道に出ました。

 

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ここは仁川に住む女の子5人の友情を淡々と描いた映画「子猫をお願い(2001年)」の撮影地としても有名で、この映画に惚れたなら一度は訪れたいと思う場所。撮影地は緑の家を右に入ったところにあります。この日は外でまったりする住民のみなさんが多すぎて、とてもじゃないけどカメラ持って入る雰囲気ではありませんでした。

仁川男子は住民のあるおじいさんにカルグクスまでごちそうになり、しかも二回目行ったときはすっかり忘れられててまた歓迎されたそうです。現在線路はなくなっています。

 

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このスラム街が出てくるシーンよりも、2001年にみたときはチャイナタウンや仁川港ばかりに目がいっていました。歳をとってもう一度見るべきだこの映画は、というのは当たっています。5人のうちのチヨンという女の子は祖父母、そして拾ってきた猫のティティと一緒にここで暮らしていました。

 

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高架下をくぐってそのままぐんぐん進みました。造船関係の工場(こうばと読んでください)と工場の間に細い道がたくさんあり、一つ選んでそのまま道づたいに進むとぱっと海に出ました。ちょうど干潮だったので海水がなく、ここ本当にさしみとか食べられるの?と一瞬不安になりました。エビや貝の塩辛のにおいが充満していました。それもまたよし。

 

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ああ、ここか!

 

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テヒ(ペ・ドゥナ)とチヨン。ところでペ・ドゥナってタバコを吸うととても絵になる女優さんですね、指が長いからか。

 

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この海辺だったのかあ、工場が目の前に見えたときちょっと感動。それにしても漁業関係のおばあちゃんと工場が近すぎてクラクラしましたが、思い出しました横浜を。鶴見にある国道という駅の近くでは、工場と魚市場およびその周辺の昭和風景のミスマッチが心をつかみましたっけ。

 

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工場好きの心も満たしてくれる万石洞。大韓飼料工業のでっかいサイロ(?)やテソン木材のたたずまいもきっと気に入ると思います。

 

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仁川駅に近づいてきました。このあたりの集合住宅は壁画や家がきれいにペイントされて少々明るい雰囲気になっていました。それでもやっぱり写真はパシャパシャ撮れなかった…後ろに大韓製粉のシロクマが見えます。

 

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上からみるとこのような感じでこちらのニュースから。

 

ところで、(今回訪れることができなかった)ケンイブリマウルのほとんどが再開発され、低所得者向けの集合住宅が新たに造成することが決定されたと報じています。舞台になっている大変有名な小説があります。タイトルは「ケンイブリマウルのこどもたち」。

うれしいことに日本語訳版「ねこぐち村のこどもたち」があります。この小説の舞台を安易に消し去ってはいけないと、仁川市はケンイブリマウルの一部の空き家は保存して文化活動に活用していく考えなのだそうです。


  



  

 

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2 Comments
  1. りうめいさんが地図読み苦手とは意外中の意外でした。
    仁川もりゅうめいさんのブログを拝見し行ってみたい場所の仲間入り。でも、実は私も地図が苦手なんですよね。加えて土地勘もないので敷居高いです。

    • >ありりさん
      いやいや、地図まったくだめなのです!この万石洞は地図を息子が見ながら進んだという。
      仁川はチャジャンミョンが有名ですが、チャンポンもおいしいです。
      仁川建物散歩の会でも開きたいものです。
      というか馬耳山もまだいってない、ニンジンスパも!

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