駅三洞

※西暦すべて漢数字になっています。

ソウルは市の中心を漢江が横切るように流れており、北と南に隔てられた地域はそれぞれ江北(カンブク)、江南(カンナム)と呼ばれています。 江北には古くから都があったため宮殿や城壁などの史跡が多いのに対し、江南は一九七〇年代から八〇年代にかけて政府主導で住宅、オフィス開発が急速に進められました。江南エリアの中心とも言える地下鉄二号線、盆唐線江南駅の隣駅である駅三(ヨクサム)駅周辺は、ソウルを代表するオフィス街として知られています。今回は江南エリア、駅三洞を紹介したいと思います。

駅三洞の由来

駅三、駅が三つ、どこの駅?と思われるかもしれません。この駅は鉄道の駅ではありません。中国や日本でもそうであったように、国内の陸路の往来はもっぱら馬によるものでした。馬の休憩所、乗り換え場所はそのまま旅行者の宿泊所や休憩所でもあり、高麗・朝鮮時代にその宿場は駅村(ヨクチョン)と呼ばれました。駅三洞にはマルチュッコリ(馬粥巨里※下の地図内にある表記、現在の良才洞一帯)、ウィッパンアダリ(上方にある橋) 、アレッパンアダリ(下方にある橋)という駅村があり、一九一四年の行政区域改変の際にその三つを合わせて駅三里と呼ぶようになりました。駅三里は、一九六三年一月に京畿道広州郡彦州面からソウル市に編入。はじめは城東(ソンドン)区永東(ヨンドン)出張所の管轄でしたが、一九七五年一〇月、江南区が新設された時に江南区駅三洞となりました。地名の由来であるパンアタリはどこにあった橋なのか、川はどこなのかは調べてみたもののよくわかりませんでした。
ウィッパンアダリにあった集落は現在の国技院(テコンドー関連団体)あたり、アレッパンアダリにあった集落は現在の駅三小学校あたりにあったそうです。なお、駅三小学校の近くに江南エリアでは珍しい(?)古い韓屋があります。かつて多宝(タボ)という韓国式の高級料亭が入店していました。多宝のホームページの紹介によれば五十年の歴史があるとのことですが、二〇一八年六月に太平(テピョン)という高級料亭と合併。都園料亭(トウォンヨジョン)という名前でビルの一フロアで営業しています。一九七〇年代の駅三洞はようやく開発が始まった頃で山と畑が多かったでしょうから、多宝ができた当時は、大変ひっそりとした空気に包まれていたかもしれません。

 

テヘラン路

江南サゴリ(十字路)から三成洞(サムソンドン)の三成橋まで東西に延びる、約三・七キロメートルのテヘラン路は、金融機関、ベンチャー企業、国内外の大企業のオフィスが集まり、江南エリアを代表する通りとして知られています。元々は三陵路(サムヌンノ)と呼ばれていましたが、一九七七年六月十七日のイラン市長ソウル訪問を記念し、具滋春(ク・ジャチュン)ソウル市長が道路名を変えました(なお、テヘラン市にもソウル通りがあります。ソウル通り南端にはソウル公園があり、中東では珍しい松の木が植えられています)。駅三駅二番出口を出てテヘラン路(駅三駅十字路)を江南駅方面に見てみると、駅三駅は大変高いところ(坂の上)に位置していることがわかります。このあたりは一九六〇年代までは山で、渓谷もあったそうです。
駅三駅のお隣の駅は宣陵(ソンヌン)駅、世界遺産に登録された朝鮮王陵のひとつである宣靖陵があります。都会の中に突然緑が現れて驚くのですが、ちょっと前まではこのあたりは森だったのです、想像もつきません。一九七〇年代になると駅三駅七番出口、現在のGSタワーの場所に半島ユースホステルというユースホステルができます(ソウル市航空地図や新聞などで調べた結果、一九七四年に開業したのではないかと推測)。一九八〇年代の韓国ガイドブックを見ると、〝ホテル並みの施設で、共同シャワーもある。一般的にはオンドル部屋を数人で利用する。料金は六人部屋に二人で宿泊した場合は、一人一泊四千ウォン。食事は朝食が二千ウォン〟。一九八七年に泊まったことのある方からお話を伺いましたが、ビルがぽつぽつ建っていたのをおぼろげに覚えているとのことでした。
ところで、テヘラン路でひときわ目立つビルと言えば、ポスコタワー駅三(旧ポスコP&Sタワー)。こちらは地下六階、地上二七階の建物で、設計にアメリカのコーンぺダーセンフォックスアソシエイツ(KPF)が関わっています。KPFは、東京の六本木ヒルズ森タワーや上海の上海環球金融中心、韓国では仁川のポスコタワー松島(改称前は北東アジア貿易タワー)、ロッテワールドタワーなど多くの有名なビルの設計に関与した建築事務所として知られています。鋭角の三角形が空に向かってのびていくようなガラス部分はビル全体に躍動感を与え、晴れた日にはガラスに青空が映り込み、ビルの魅力が一層増します。独特な外観は高い評価を受け、建築関連の賞をたくさん受賞しています。二〇〇四年にはソウル市建築賞、二〇〇六年には第一回江南美しい建築物に選ばれました。

 


 

かつて存在した太極堂の結婚式場

韓国ソウルの老舗製菓店して知られる太極堂(テグクタン)、一九四六年の創業でソウルでは最も古い製菓店と言われ、明洞にお店がありました。一九七三年に地下鉄三号線東国大入口駅の現在の場所に移転。二〇一五年に大幅なリニューアルをして、そのレトロな雰囲気が若い人にも人気です。この太極堂がかつて駅三洞で結婚式場を運営していたと、店のホームページで知りました。製菓工場もあったそうです。結婚式場は一九八二年にオープン、二〇〇三年まで営業しました。場所は現在の地下二号線、新盆唐線江南駅の四番出口を出てすぐ。今はサンヨンプラチナムベリューというオフィス兼住宅のビルになっています。一九八〇年代の江南はどんな感じだったのでしょうか、ちょっと想像が難しいですね。

■おすすめのお店

駅三洞プゴチッ
江南ファイナンスセンタービル裏の路地裏にあり、あまり見かけないプゴチム(干しスケトウダラの辛い味付けの煮物)の専門店です。約三十年前、畑以外何もないところに適当に店を出したのが始まりだそう。爽やかな辛味とよく煮込まれたプゴ、玉ねぎの甘味がよく合います。なぜかキャベツの千切りがそのまま入っています。食感を楽しむのかもしれません。全体的に甘い味付けです。お昼に行くと、席に座った途端人数分のプゴチム定食が運ばれてくるのは専門店だからでしょうか?


パンアダリ
駅三洞の地名の由来でもあるパンアダリが店名のカルグクス(韓国式のうどん)屋さん。小さいお店ながら、駅三洞で一番おいしいカルグクスとして知られ近所で働く会社員らがたくさん訪れます。カルグクスとスジェビ(韓国式すいとん)が一緒に入っているカルジェビも人気。箸休めのキムチや唐辛子粉で和えたたくあんもなかなかだそう。


駅三洞プゴチッ(역삼동북어집)
住所:ソウル特別市 江南区 駅三洞738-2
서울특별시 강남구 역삼동 738-2
電話番号:02-558-6605

■パンアダリ(방아다리)
ソウル特別市 江南区 駅三洞775-4
서울특별시 강남구 역삼동 775-4
電話番号:02-539-2718